総合医学研究所は、佐々木正五初代医学部長を所長として、1980年に東海大学総合研究機構のもとに開設されました。以来45年にわたって、時代の流れと学問の変革に対応すべく組織の改編を重ね、東海大学屈指の研究所として発展してきました。その基本理念は、本学における医科学先端研究の中核拠点となるべく、基礎医学と臨床医学の融合を通じて疾患の病態解明と新規の診断・治療法の開発、さらには創薬研究を推進し、社会に貢献することにあります。
創設以来とりわけゲノム・再生・創薬の各分野において顕著な業績を挙げ、多くの論文発表や特許取得を通じて国内外に発信してきました。その一端は、歴代の研究所長や所員が「21世紀COEプログラム」、「ハイテク・リサーチ・センター整備事業」、「学術フロンティア推進事業」、「私立大学戦略的研究基盤形成支援事業」、「高度医療人材養成拠点形成事業」など、幾多の文部科学省の大型研究補助事業の代表者を務めてきた実績からも伺い知ることができます。
■研究所が目指すもの
近年では学問の多様化と領域間連携がいっそう進み、それにより学問の幅が拡がると同時に深みも増します。医科学研究においても、単に医学的あるいは生物学的アプローチのみでは自ずと限界があり、理工学や薬学をはじめとする諸分野と積極的に連携して新しい視点を取り入れていかなければ、学問の進歩など到底望めないと思われます。当研究所では2024年度より、従来は1年毎に指定してきたコアプロジェクト研究を、研究所プロジェクトとしての成果を期待するコア1(最長3年)と、プロジェクト研究への発展の可能性を問うコア2(最長2年間)に改編し、所員の相互評価により選出する制度を発足させました。一定期間における研究費を集中配算することで研究の発展を図りますが、その目的は単なる個人研究の支援ではなく、研究所内の連携をいっそう推進し、さらにはマイクロ・ナノ研究開発センターをはじめとする他の研究所との共同研究を活発化させる仕組み作りにあります。
また、次代を担う若手研究者の育成を目的に2015年度に発足した特別研究所員制度では、これまで多くの優れた研究者を迎え入れ、研究所の発展に大きな貢献を果たしてきました。2025年度も3名の特別研究所員が参画し、活発な研究活動を行う中で他の所員との共同研究へと発展することを期待しています。
■課題と将来展望
当研究所は医学部とは独立した大学直属の付置研究所として発足しましたが、2005年度以降は専任所員が配置されなくなり、医学部教員が所長と所員を兼担する形で運営されてきました。医学部の基礎系研究室や病院部門との緊密な連携が図られた一方で、学部教育や診療に多くの時間が費やされる中、医科学先端研究を推進する研究所本来の活動に充分な時間が割けないことが大きな問題となっていました。また、専任所員の不在は、国の大型支援事業への応募に際しても少なからず不利益をもたらしていましたが、2024年度から2名の専任教員が配属されました。
新医師臨床研修制度に追い打ちをかけるように医師の働き方改革が実施され、臨床系を中心に研究時間の確保がいっそう困難となり、わが国における医学研究力の低下が大きな問題となっています。このような状況下において、臨床系教員の研究を支援する受け皿としての当研究所の役割と仕組み作りに関して、活発な議論が行われています。
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